シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
征司が頬にえくぼを刻んで笑った。

「みちえちゃんの返事、聞かせてくれない?」

「私は……」

私も本当は――そう言うつもりが、ぽろっと涙がこぼれた。だけど今度こそ、素直にならなくては。

私は涙を拭くと、じっと見守るような目をしている征司を見上げた。

「私も征司君のことが好きよ。高校で再会した時から、うぅん、会わなかった間もきっと、ずっとずっと気になってた。つき合っていた人がいた時も、心の中にいたのは征司君だった」

征司は私の言葉を聞き終えると、小指をそっと差し出した。

「子どもの頃、こうやって約束したこと、覚えてる?」

「うん」

私はおずおずと自分の小指を征司の小指に絡めた。

「今度こそ本当に、俺の恋人になってくれる?」

「うん」

頷いてから、タイミングよく征司が現われたことを疑問に思い、私は訊ねた。

「そう言えば、どうしてここに来たの?」

「それはね」

と、征司は中庭の向こう側を目で指し示した。

「テニス部の部室があるんだ。ここ、通り道にしてたから、たまたま見かけてね」

「そうなんだ。テニス、やってるんだね。でも、よく私だって分かったね」

「分かるさ。だって、好きな人の姿なんだから」

「それに、さっき先輩、すごく痛がってたけど、あれは何なの?」

「ん、いつかみちえちゃんを守れたらって思って、ちょっとだけ護身術みたいなの習ってたことあったんだ」

「え……?」

目を瞬かせる私に、征司はくすりと笑う。それから私の手を取り、指を絡ませた。

「帰ろうか」

「うん」

子どもの頃、手を繋いで二人で帰ったことを思い出す。私は征司の手をきゅっと握った。
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