シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
手紙
その年の秋、私は新しい家に引っ越すことになった。
同じ市内ではあったけれど、西と東の正反対の学区だったから、必然的に転校することになった。
征司とさよならするのは寂しいと思った。けれど、公一たちから冷やかされたあの日からずっと、私たちはぎこちないままで、必要最低限の会話くらいしかしなくなっていた。
今日でこの学校に来るのも最後という日。
学校に置いていた細々した荷物を取りに来たママと一緒に、私は学校の門を出た。名残惜しいような気持ちで立ち止まり、振り返った時、校舎の方から駆けて来る征司の姿が目に入った。
「征司くん……?ママ、ちょっとだけ待ってて」
私は征司の方へゆっくりと近づいていった。
征司は私の前で足を止めると、白っぽい何かを差し出した。照れくさそうな顔をしている。
「これ、何?」
「手紙。後で読んで」
「あ、ありがとう」
私をその封筒を受け取ると、おずおずと言った。
「あのね、今まで仲良くしてくれてありがとう」
「うん。元気でね」
「征司くんもね。じゃあね、バイバイ!」
あっさりとした別れ方だった。私たちはそう言って手を振り合うと、私はママの元へ、征司は学校へと戻って行った。
「何だったの?」
訊ねるママに私は素直に答えた。
「手紙もらったの」
「まぁ」
ママは微笑まし気な顔をした。
「新しいお家に行ったら、お返事書こうか」
「うん」
家に帰って開いた手紙には、たどたどしい文字が並んでいた。
一緒に遊んで楽しかった、とか、またいつか会えた時には一緒に遊ぼう、だとか、書かれていたのは簡単な内容だった。だけど、嬉しかった。
住所は手紙に書いてあった。私は、ママに買ってもらった可愛らしい封筒と便箋を使って返事を書いた。
最後にひと言こう書いた。またね、と。
同じ市内ではあったけれど、西と東の正反対の学区だったから、必然的に転校することになった。
征司とさよならするのは寂しいと思った。けれど、公一たちから冷やかされたあの日からずっと、私たちはぎこちないままで、必要最低限の会話くらいしかしなくなっていた。
今日でこの学校に来るのも最後という日。
学校に置いていた細々した荷物を取りに来たママと一緒に、私は学校の門を出た。名残惜しいような気持ちで立ち止まり、振り返った時、校舎の方から駆けて来る征司の姿が目に入った。
「征司くん……?ママ、ちょっとだけ待ってて」
私は征司の方へゆっくりと近づいていった。
征司は私の前で足を止めると、白っぽい何かを差し出した。照れくさそうな顔をしている。
「これ、何?」
「手紙。後で読んで」
「あ、ありがとう」
私をその封筒を受け取ると、おずおずと言った。
「あのね、今まで仲良くしてくれてありがとう」
「うん。元気でね」
「征司くんもね。じゃあね、バイバイ!」
あっさりとした別れ方だった。私たちはそう言って手を振り合うと、私はママの元へ、征司は学校へと戻って行った。
「何だったの?」
訊ねるママに私は素直に答えた。
「手紙もらったの」
「まぁ」
ママは微笑まし気な顔をした。
「新しいお家に行ったら、お返事書こうか」
「うん」
家に帰って開いた手紙には、たどたどしい文字が並んでいた。
一緒に遊んで楽しかった、とか、またいつか会えた時には一緒に遊ぼう、だとか、書かれていたのは簡単な内容だった。だけど、嬉しかった。
住所は手紙に書いてあった。私は、ママに買ってもらった可愛らしい封筒と便箋を使って返事を書いた。
最後にひと言こう書いた。またね、と。