シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
それから時々、征司から手紙が届くようになった。

受け取ればやっぱり嬉しくて、私も返事を書いた。

内容はいつも、子どもらしい他愛のないものだった。例えば、この前の連休には動物園に連れて行ってもらった、テストで頑張っていい点が取れた、新しく習い事を始めて楽しい――そんな日常を、まるで交換日記でもしているような感覚で、互いに書き連ねていた。

転校してから会うことは全くなかったけれど、手紙の文章と文字を通して征司の人となりを想像しては、いつか会った時のことを考えて、楽しい気持ちになっていた。

けれど、新しい環境になじみ、新たな友達が増えていくにつれて、征司から届いた手紙に返事を出す回数が減っていった。征司のことを嫌いになったわけではない。ただ、会うことがなくなって、顔も写真を見なければはっきりとは思い出せなくなりつつあった幼馴染との関係よりも、自分の日常の一部となっていた友達との関係の方が、身近で大切に思えた。

そして案の定、それと同時に征司から届く手紙の回数も減っていった。当たり前だ、仕方ないと思った。私自身が手紙を出さなくなりつつあったわけだし、それでなくても、征司にだって、身近なところに大切な自分の世界があったはずなのだから。

次第に、毎年のようにやり取りしていた年に一度の年賀状さえも、中学に入ってからは、私から出すことも、征司から届くこともなくなった。その頃の私にとってはもう、征司は「仲が良かった幼馴染」という思い出の世界の中の一登場人物になりつつあった。

――しかしその数年後、高校生となった私と征司は再会した。
< 6 / 41 >

この作品をシェア

pagetop