シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
再会
クラスは征司が1組、私が6組で、長い廊下の端っこと端っこ同士だった。そんな位置関係だったから、普段はまず接点がない。だから私たちが実際に顔を合わせたのは、桜の季節がだいぶ過ぎた新緑のまぶしい季節になってからのことだった。
その再会の時、私の心に最初に生まれた感情は「気まずい」だった。
転校してから数年間の手紙のやり取りの後、自然消滅的に征司との連絡を途絶えさせてしまったのは自分だという罪悪感のようなものが、ちょっぴりあった。実際は、それはどちらからというものではなかったのかもしれない。ただ少なくとも、私があまり返事を書かなくなってしまったことが原因の一つのような気がしていた。それに、この日偶然再会するまで、征司の顔を忘れかけていたということもあった。征司はすぐに私が誰か分かったというのに。
その日は午後から音楽室へ移動する必要があって、私は友達と廊下を歩いていた。
その途中、音楽室に最も近い場所である1組の教室の出入り口の前を通った時だった。友達とのお喋りに夢中になってしまって、私は人が出てきたことにすぐに気がつかず、教室から出てきたその人にぶつかってしまった。
「すみません!」
その人は驚いたように体を引いた。
私は慌てて頭を下げながら謝った。
「ごめんなさい!すみませんでした!」
すると、頭上からおずおずと言った風に声が降って来た。
「もしかして、みちえちゃん?」
いきなり下の名前で呼ばれたため、私は怪訝な顔をして相手を見上げた。しかし、しばらくして薄れかけていた記憶をつつかれたような感覚を覚え、同時に息を飲んだ。
「征司、君……?」
その顔には、よく見ると、ようやく思い出した幼い頃の面影が確かに残っている。しかしその姿は、少年から青年へと変わりつつあるその狭間にあった。
私はうろたえた。
しかし征司の顔は嬉しそうに綻んでいる。
「やっぱり、みちえちゃんだ……」
私は苦しくなった。だって、私は征司だと思った瞬間、「気まずい」と思ってしまったのだから。
私の表情に気づいただろうに、征司はにこりと笑った。
その再会の時、私の心に最初に生まれた感情は「気まずい」だった。
転校してから数年間の手紙のやり取りの後、自然消滅的に征司との連絡を途絶えさせてしまったのは自分だという罪悪感のようなものが、ちょっぴりあった。実際は、それはどちらからというものではなかったのかもしれない。ただ少なくとも、私があまり返事を書かなくなってしまったことが原因の一つのような気がしていた。それに、この日偶然再会するまで、征司の顔を忘れかけていたということもあった。征司はすぐに私が誰か分かったというのに。
その日は午後から音楽室へ移動する必要があって、私は友達と廊下を歩いていた。
その途中、音楽室に最も近い場所である1組の教室の出入り口の前を通った時だった。友達とのお喋りに夢中になってしまって、私は人が出てきたことにすぐに気がつかず、教室から出てきたその人にぶつかってしまった。
「すみません!」
その人は驚いたように体を引いた。
私は慌てて頭を下げながら謝った。
「ごめんなさい!すみませんでした!」
すると、頭上からおずおずと言った風に声が降って来た。
「もしかして、みちえちゃん?」
いきなり下の名前で呼ばれたため、私は怪訝な顔をして相手を見上げた。しかし、しばらくして薄れかけていた記憶をつつかれたような感覚を覚え、同時に息を飲んだ。
「征司、君……?」
その顔には、よく見ると、ようやく思い出した幼い頃の面影が確かに残っている。しかしその姿は、少年から青年へと変わりつつあるその狭間にあった。
私はうろたえた。
しかし征司の顔は嬉しそうに綻んでいる。
「やっぱり、みちえちゃんだ……」
私は苦しくなった。だって、私は征司だと思った瞬間、「気まずい」と思ってしまったのだから。
私の表情に気づいただろうに、征司はにこりと笑った。