朝、夜、劣情。
 熱に浮かされたように頭が回らなくなりそうな中で、まだ僅かに生きている理性が、この状況はおかしいと舞緒に訴えかけた。ここまで来ると、どう考えても、舞緒の耳に入ってきた話とは違うように感じられた。朝葉のプレイは、過度な接触も、性的な行為も、ほとんどないとされているはずだ。しかしながら、今しているこれは、口に指を入れ、淫らに触れるこれは、そのどちらにも該当することなのではないか。舞緒は疑念を抱くも、欲求を満たすような淫靡な刺激に打ち勝つことができず、ずるずると引き摺られ、あえなく撃沈し、流されてしまった。

 口内では、依然として朝葉の指が蠢いている。攻められ、煽られ、呼吸を濡らす舞緒の唇の隙間から、ねっとりとした唾液が垂れようとしていた。瞳すら熱くさせる舞緒は正気に戻ることもなく、専ら親指を咥えさせられ続けた。朝葉を前に情けない顔を晒していると分かっていても、緩やかに与えられる快楽からは逃れられない。冷静な態度で平然と抵抗ができるほど、舞緒は強気には出られなかった。

 弄ばれている舌は性感帯などではないはずなのに、Subの欲求が予想以上に強いせいか、色欲を煽るような刺激やそのような水音が全て享楽に繋がっているかのような錯覚に陥った。Domの朝葉の言動に逆らえる気がしない。このまま自分は、どこまで流され続けてしまうのだろう。やめるタイミングを見つけ出さなければと舞緒は自分に言い聞かせようとするが、不思議と胸に染み渡る心地良さや、朝葉の甘やかすような柔い眼差しが、正気を取り戻そうとする舞緒をすかさず酩酊状態にさせた。思考がまとまらない。気持ちよさには勝てない。
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