朝、夜、劣情。
「俺の指、樫野くんが気持ちいいと思う方法で、好きに舐めてみてくれない? どの指を使ってもいいよ。"Lick(舐めて)"」

 咥えさせられていた親指を引き抜かれた。唾液が糸を引き、音もなく切れる。朝葉の一本の指は、舞緒の唾液で濡れ、てらてらと滑っているようだった。

 その濡れた指を含めたどれかを好きに舐めてと命じられた舞緒は、唇を閉じることもせず、顎を伝う涎を拭うこともせず、朝葉の指に顔を近づけた。舐めないと。舐めなければ。舐めたい。気持ちいいと感じる方法で指を舐めること。それがDomの命令だ。舞緒の身体は、Domには従順でなければならないという使命感に覆い尽くされていた。

 実験の様子をよく観察するような朝葉の眼光を一身に受けながら、陶酔気味の舞緒は朝葉の人差し指の先を、傀儡の如く自身の舌先で軽く舐めた。頬杖をついたままの朝葉の口端が、機嫌よく持ち上がる。それでもまだ、直接的に褒めてはくれない。舞緒も気持ちいいとまでは感じていない。もっと深く、もっと淫らに。目が覚める前に。

 舞緒は朝葉の腕を掴んだままだった両手を、指を舐めやすくするために移動させた。手のひらと手首の辺りを持ち、できるだけ動かないように固定する。そして、朝葉の人差し指に舌を這わせた。何度も同じ箇所を舐め、よく湿らせてから、何の疑問も抱くことなく口に咥えてしゃぶるように舐める。指の輪郭を辿って円を描くように舌を絡ませると、たまに爪が擦れ、その小さな刺激が舞緒の息を熱くさせた。気持ちよかった。指の腹よりも、爪の先の方が、気持ちよかった。

「上手だね。初めてとは思えないくらい。樫野くんにはSubとしての才能があるよ」
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