朝、夜、劣情。
「Subの快楽に惚ける姿は、Subを支配するDomを安心させる大事な要素でもあるんだよ。少なくとも俺はそう。Subを気持ちよくさせたい。甘やかしたい。信頼してほしい。褒めてあげたい。俺の欲求は、大体のDomが抱くような一般的なもので、彼奴みたいに、暴力だったり暴言だったりで支配したいとは思わない。樫野くんが俺とのプレイで気持ちよくなってくれたのは本当かもしれないけど、途中で乱入した彼奴が施した、危険を伴う行為の方が善さそうだったよ。俺にはあんなことできないから、もしそっちを本能で求めているんだとしたら、変に気を遣わなくていいからね」

「そんなこと……」

「あるんじゃない? 俺の指を勝手に使って、だけど、いきなり喉を犯されて、いきなりハードなコマンドを囁かれて、それなのにサブドロップに陥ることもなく達したよね? その時の樫野くんを目の前で見て、正直びっくりしちゃった。Subのことなんか何も考えてなさそうな、自分の欲求を満たすためだけに愛のない暴力を振るうような、ドがつくほどのSなDomの彼奴に応えられる超絶ドM気質のSubがいるなんてって」

 彼奴、味占めて樫野くんに執着しちゃうかもね。飄々と緩い口調で、朝葉はありもしないであろうことまで、ついでのように、流れに乗るように、付加した。嫌味というより、ただの揶揄が含まれているような気がした。決して煽動しているわけではないだろうが、舞緒の胸はざわざわと騒ぎ、感情が引き出されるかのように熱くなった。朝葉は続ける。

「俺ね、彼奴のことは大っ嫌いだけど、でも、だからって、一生満たされずにそのうちぶっ倒れてほしいとかそんなことは思ってないわけで。お互いに健康だからこそ、真正面から遠慮なく嫌いって言えるし、ああいう言い争いもできるんだよね」

「あの……、ごめん、話の先が、見えない……」

「ああ、回りくどかったかな。単刀直入に言うとね、たまには彼奴のプレイの相手もしてやってほしいなっていう話なんだけど」

「……え」
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