朝、夜、劣情。
 学校内でも有名な神楽双子は、二卵性双生児だった。顔があまり似ていない。それでも、二人とも整った面立ちをしており、彼らを憧憬する人は多数いた。寡黙な一匹狼の兄と、愛想のいい弟。親しみやすいのはどちらかなど一目瞭然であり、Subが安心してプレイができるのはどちらのDomなのかも、言うまでもなかった。流れている噂が、体験した人の声が、それを如実に表してもいた。

 大体の人が雰囲気の柔和な朝葉を好んでいる中、最近の舞緒は専ら朔夜のことが気になっており、他クラスの彼の姿を目にした時は黙って見つめてしまうことが増えていた。決して好意を抱いているわけではなく、ただ、初めて感じたあの快感がどうにも忘れられず、最初から最後まで朔夜とプレイをしてみたいという淫らな欲求が日々強くなっているのだった。

 あれ以来、利害の一致で、朔夜の弟の朝葉とコミュニケーションをとる回数も多くなったが、手荒な真似はしない、できないという朝葉では物足りないと感じてしまう部分もあった。朝葉もそれは承知の上で、自ら好んで舞緒とプレイをしているようだった。

 朝葉との関係も少しばかり深くなり、引っ込み思案な舞緒であっても気兼ねなく話せるようにはなったある日のこと。この日は特に約束などはしていなかったが、どことなく痺れを切らしたような朝葉に、放課後、舞緒は声をかけられた。

「樫野くん、まだ彼奴としてないの?」

「……してないよ」

「いつ彼奴の相手、してくれるの?」

「いつって言われても……」

「今日これからとかしない?」

「きょ、きょう、これ、これから……?」
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