朝、夜、劣情。
 動転した。まだしてないのかと聞かれた時点で、突然何を言い出すのかと思ったが、本当に、朝葉は突然何を言い出すのだろう。なぜそこまで、自分に彼奴の、朔夜の相手をしてほしいのか、今日これからしないかと勢い込まれ、思いがけない言葉に吃り、しどろもどろになってしまう舞緒には理解できなかった。朝葉の思考も、朝葉が何を企んでいるのかも、何一つ読めない。

 舞緒自身、朔夜としてみたい気持ちは確かにあるが、朔夜とはまともに会話をしたことがなければ、当然プレイをする流れにもなったことがなかった。それは朝葉にも言えたことではあったが、彼の場合はそのようなことをする自然な流れができていた。性格から何から対照的な二人だ。朝葉の時みたいに上手く事が進むとは限らない。

「彼奴ね、樫野くんがいるのに、他の誰かに求められて適当に遊んで、またドロップさせたみたいなんだよね。相手も相手だよね。樫野くんと違って普通のSubなんだから、彼奴とやればそうなるって分かってるはずなのに。自分なら満足させられるって驕っちゃったのかな。見てられない勘違いSubだね。彼奴もさっさと樫野くんとやればいいのに。こんなに待たせて、焦らしプレイのつもりかな」

 穏やかな口調で次々と毒を吐く辛辣な朝葉は、朔夜を誘ったどこかの誰かに対しても、どこかの誰かの誘いに乗り、またしてもサブドロップを起こさせた朔夜に対しても、静かに憤っているようだった。

 今の朝葉は不機嫌だ。グレアを放つようなそれとはタイプが違う人間らしい不機嫌さ。自分の思うようにいかないことへの苛立ちを覚えている。何をどうしてほしいのか、何をしようとしているのか、何を求められているのか、何を求めているのか。時々、朝葉からは得体の知れないものを感じることがあり、仲良くはなっているものの、舞緒は未だに朝葉との距離感を計りかねていた。
< 25 / 43 >

この作品をシェア

pagetop