朝、夜、劣情。
「これで、何も気にする必要はないよ。プレイすれば体調も良くなるはずだから、俺と二人きりで少し話そう」

 柔らかい口調でありながら、どこか突き放したような冷たさで女子生徒に席を外させた朝葉が、それとはまた微妙に違った声色でそう告げ、覗き込むようにして舞緒の顔を凝視した。慣れない眼差しが自身に絡みついていることに、自らが望んだことなのに、Domである朝葉と二人きりになってしまったことに、舞緒は逆に落ち着かなくなってしまう。人目が気になると頷いてしまったせいで、朝葉に女子たちを追い出させてしまったという罪悪感すら芽生え始めており、短く浅く繰り返す舞緒の呼吸は微かに震えていた。

「樫野くん、緊張してる?」

「……ごめん」

「謝らなくていいよ。初めての時って、みんな大体そうだから」

 多数のSubを満足させてきたからこその余裕が、朝葉からは感じられた。全身ガチガチになってしまうSubは、何も舞緒に限った話ではないようだ。朝葉の言葉をそのまま鵜呑みにするのであれば、そういうことになる。朝葉とプレイをしたSubがどのような反応を示したのか、詳細を知らない舞緒には嘘を吐くこともできるのだ。嘘を本当のことのように話すことも、朝葉であればできるのだ。

「樫野くんは俺のこと苦手?」

「あ、いや……」

「気を遣わなくていいよ。苦手なら苦手って言っていいから。俺は樫野くんと本音で話したいし、樫野くんの本音を知りたい。俺のことどう思ってるか、ゆっくりでいいから、"Speak(話して)"」
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