雨の日は貴方を想い出します
「初めて会ったのは、図書館だった。俺もあの図書館、よく通ってるからさ。雨の日で、雨宿りしてて。そんなのを何度か見かけた。大好きな本に囲まれて、楽しそうにしている葵に俺は興味を持ったんだ。」と拓也くんは言った。

「そうなんだ。私、全然知らなかった」と言うと、

「その後だよ。葵が同じ学校だって知ったのは。雨の日は、よく図書室で、時間潰してただろ?偶然、見かけて、先生に聞いて教えて貰ったんだ。津島葵って名前」と照れるように、拓也くんは続ける。

私も顔が赤くなっていくのがわかった。

「あの日も、ほんとは、偶然とかじゃなくて、葵と話してみたくて。実はタイミング、見計らってた。同じクラスになったとき、めちゃくちゃ嬉しくて。いつか、チャンスこないかなって思ってたんだ」と話してくれた。

「そうだったんだ。私、そんなこと、全く知らなかった」と私が言うと、

「まあ、そうだよな。勝手に俺が片思いしてただけで興味なんて無かったよな」と少し寂しそうに笑いながら

「けど、良かった。こうして葵と仲良くなれて」と拓也くんは言ってくれた。

「ありがとう」と私が言うと、

「こちらこそ、ありがとう。あのさ、いつか完成したら、作品、1番に俺に見せて欲しい。俺が津島葵の1番最初の読者でファンになりたいんだ」と拓也くんに言われて、

「もちろんだよ」と私は笑った。

この日はそのまま2人で楽しく帰った。

そして、家で私は、将来の夢や、拓也くんとのことを話した。

お母さんもお父さんも応援してくれるって。

なんか嬉しくなっちゃって、ワクワクしながら部屋に戻った。

その後も、拓也くんとLINEでたくさん話した。

寝落ちするまで、やり取りしていた。

次の日、準備して家を出ると、拓也くんが迎えに来てくれていた。

「おはよ」って。

「おはよう、なんで?」と私が言うと、

「だって俺ら恋人じゃん、よくね?」って言われて、そうだねと思わず照れてしまった。

そして、私たちは、並んで歩いた。

途中でりっちゃんと合流して、

「付き合ったんだってね?おめでとう」とりっちゃんは笑ってくれた

ありがとうと私が言うと、

「私の大切な人だからね?泣かしたら許さないから」と拓也くんに言ってくれた。

拓也くんはもちろんだと頷いた。

靴箱のところでりっちゃんとわかれた私たちは、

拓也くんと一緒に教室に向かった。

「今日は一緒に登校~?やるね~」と声をかけてくる男子に

私の手を掴んだ拓也くんは

「羨ましいんだろー?ひがむなよー」と言いながら、男子たちの間を通り過ぎて行った。

私はそんな拓也くんにドキッとしていた。

なんかめっちゃかっこ良くて。

お昼休みになって、私は席を立った。

りっちゃんのクラスに行こうとしたんだけど、

「俺と一緒に食べようよ」と拓也くんに言われて、私は頷いちゃった。

拓也くんて、意外と、グイグイ来るタイプだったんだなってちょっと笑ってしまった。

私はりっちゃんにLINEして、拓也くんと一緒に食べるねとそしたら、笑顔のスタンプでOKと返ってきた。

拓也くんはどこか常にメンチを切るような怖い目つきをしていた。

「ね、拓也くん。ちょっと顔怖い」と私が言うと、

「えっ?あ、ごめん。周りの奴らが葵のことからかうかもとか思っちゃって、ついつい意識が」と言う拓也くん

「もぉ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。けど、ありがと、嬉しい」と素直に私が言うと、

拓也くんは顔を真っ赤にした。

さすがの周りも何も言えなくなっていた。

放課後、私と拓也くんは、図書室に来ていた。

2人で本を読んで過ごした。

私はこの時間も大好きだったんだ。

帰りし、私たちは古書店に寄り道した。

この古書店は昔からあって、代々家族で守られてきたそう。

学校の図書室や、図書館、全国の本屋さんから、引退した古書が集められて、販売されている。

別棟の専用書庫まであると聞いた。

今はネット販売などもしている。

古書となった本たちは新たな読み手と出会うため、この古書店の書庫で眠っている。

そんな古書店が私は大好きだ。

私と拓也くんは古書の魅力にどっぷりハマって楽しい時間を過ごして、帰宅した。

その日も変わらず寝落ちするまで2人でLINEしていた。

拓也くんと過ごす時間はとても楽しかった。

毎日が新鮮で。何より、拓也くんの優しさに包まれているって感じられて、それが何よりも嬉しかった。
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