雨の日は貴方を想い出します
私と拓也くんは毎日一緒に過ごした。

雨の日は図書室で一緒に本を読んで、1本の傘に入って帰る。

これが2人の愛を深めた。

休日はたくさんデートもした。

けど、そんな私たちももうすぐ、進路を決めないといけない。

私は正直悩んでいた。小説家になりたいといっても、すぐになれるわけでは無いし、

何か携われる仕事をしたいって。

拓也くんは、卒業したら、海外で映画の勉強をしたいって言ってた。

拓也くんの夢は有名な映画監督になることらしくて、それの勉強を海外でしたいって。

そこまではっきりビジョンを持ってる拓也くんが正直羨ましかった。

りっちゃんは一応決めてるみたい。

りっちゃん、地元で就職考えてるみたいだし、私もそうしようかな。。

私は進路希望の紙を鞄にしまった。

「拓也くん、帰ろ」と私は拓也くんの所に行った。

うんと拓也くんは言って私たちは教室を後にした。

私と拓也くんは並んで歩く。

「な、葵?進路どーするか、決めた?」と拓也くんが言ってくる。

「まだ悩んでるよ。けど、地元で就職して、物語書いてたいかなって思ってる」と私が言うと、

そっかと一言だけ拓也くんは言った。

「な、あそこ、寄ってく?」と拓也くんに言われて頷いた。

2人で来た場所は古書店だった。何かに悩んだりするとだいたいここに来てた。

おじいさんとはよく話をしていた。

ふと、「葵ちゃーん」と店長が声をかけてくれた。

「新書見てかない?」と言われて、私は奥に案内された。

新書といっても、卒業したてで届いたばかりの古書だけど。

私は思わず、キラキラ目を輝かせて見ていた。

そんな私を見て、店長が言った。

「葵ちゃんさ、卒業したら、ウチで働かない?求人募集はしてないんだけどさ、葵ちゃんにウチに来て欲しいわ」と。

「ほんとに良いんですか?私、作家になるのが憧れで、本に携われる仕事したいなって思ってたんです」と私が言うと、

「約束ね!葵ちゃんみたいな子がウチに来てくれると助かるし、本たちも喜ぶと思う」と店長は笑った。

おじいさんの代からやっているこの古書店は店長(孫)の雄馬さんにとってもとても大切な場所らしく、私はそんなお店で働けると思うと、今からワクワクして仕方無かった。

しばらくして、「葵~?そろそろ帰ろ~」と拓也くんの声が聞こえて、私は拓也くんの所に戻った。

「店長、ありがとうございました~またね」と私は言って古書店を後にした。

拓也くんに話した。

店長に言われたこと。

「めっちゃいいじゃん」と拓也くんは喜んでくれた。

「うん、ありがとう。私も嬉しくて」と返した。

私たちは家に着くまでずっと他愛ない会話をしていた。

次のデートはどこ行くとか、行ってみたいお店があるとか

そんな話をしてたらあっという間に家に着いてしまう。

拓也くんにバイバイして家に入った。

私は手を洗って、着替えて、食卓についた。

そして、「今日、進路希望の紙貰ってきた」と言って私は机に出した。

お母さんはのぞき込んで、「白紙じゃない」と一言言った。

「雄馬さんが卒業したら、ウチにおいでって誘ってくれた」と私が言うと、

「雄馬って誰だ?」とお父さんは言う。

「ほら、私が良く行ってる古書店だよ。昔からやってる。代々続いてる」と私が言うと、

「あー、あそこか」とお父さん

「あそこ?良いじゃない!あなたの大好きな場所じゃない」とお母さんは言ってくれる。

「うん!募集はしてないらしいんだけど、店長が直々に、私に来て欲しいって」と私が言うと、

「良かったわね!近くで働けるのね。と言うことは、ここから通えるし、家で物語も書けるわね!」とお母さんはとても喜んでくれた。

お父さんもどこか嬉しそうにしていた。

それから私と拓也くんは思いきり遊んだ。

りっちゃんと彼氏と4人で遊ぶこともあった。

幸い、拓也くんのお陰で私はいじめられることもなく、楽しく過ごすことが出来た。

それからあっという間に月日は流れて、卒業式を迎えた。

卒業式を終えて、りっちゃんたちと写真撮ったりして、私と拓也くんは古書店に来ていた。

店長に挨拶も兼ねて。

拓也くんは、

「何年かかるか、わからない。5年、いや、10年、もっとかもしれない。けど、必ず、戻ってくる。葵の元に、だから俺を待っていて欲しい。帰ってきたら、俺と一緒になって欲しい」と私に言った。

私は頷いて「待ってる。何年でもずっと」と言うのが精一杯だった。

正直不安だった。

拓也くんに会えなくなると言うことが。

私、自分の夢を追いかけられるのかも、不安だった。

そんな私を拓也くんは抱きしめて、「大丈夫!葵なら」と言ってくれた。

その言葉で私は少し大丈夫な気がした。

「拓也くん、しっかり学んでおいでね。その間は僕が責任持って、葵ちゃんのこと、守りますから」と店長は言ってくれて

「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」と拓也くんは言った。
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