年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
「ナビ使うの?」

 照井が声を掛ける。

「方向音痴なので」

 そう言って笑ったが、

「俺、道分かるからナビいらないよ」

 と声が掛かる。

「この先30分くらいで峠があるの知ってる?」

「あー、知ってますけど通ったことないですね」

「そこ通って向かおうよ。峠って言っても大変な峠じゃないし」

 う~ん、と悩む千葉に続けて声が掛かる。

「峠とか苦手なタイプ?」

「いや、ギアをガコガコして登っていくタイプです」

「じゃあ大丈夫だ。道分かるからナビいらないよ」

 不安が顔に出ていたのだろうか、照永が笑って続ける。

「大丈夫だって、俺ちゃんとナビ出来るから、ちゃんと教えるから」

「わかりました、じゃあナビ消しますね、ホントですよね? ちゃんと教えてくださいよ」

「大丈夫だって」

 そうして2人の日帰り旅行は始まった。
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