年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
 峠へ入る道までは国道を走る。

 さすがの千葉でもそれは分かっていたが、照永は細かく『そこの信号を左』とか、『ここを曲がれば国道』とか、正確に分かりやすいタイミングで道順を教えてくれた。

「ほら、ここから峠に繋がる道に入っていくよ」

 先に見えるのは高速道路の看板。

 『峠を越えるって言ってるから、高速には乗らないんだよね?』

 そんな心の疑問も見透かすかのように説明してくれる。

「この先進んだら高速に繋がる道だけど、高速には乗らないで峠を進んでいくのよ」

 どんどんと民家が無くなり、山の中へと進んでゆく道。

 千葉は運転しているため前を見ているが、照永はこの2人での日帰り旅行を楽しんでくれるのだろうかという小さな不安があった。

 『天気が良くてよかったですね~』なんて会話をしてここまで来たが、しつこい千葉にしょうがなく付き合ってくれているだけなのではないかと不安だったのだ。
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