年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
「いいね、緑だね」

 唐突に照永がそう言いだした。

「いい緑だな」

 その言葉で照永は周りの景色を楽しんでいるのだと理解した。

 そして、運転のことや照永のことに気を取られて周りの景色を楽しんでいない自分に気付いた。

「そうですね~。ついこの間まで枯れ木のようだったのがもうこんなに青々として」

 もしかしたら、自分で思っている以上に緊張しているのかもしれない。

「新緑ですねー」

 『新緑、新しい緑。確かに今年の新緑だ』

「新緑ですねー。ほんと、綺麗な緑」

 運転をしながらちらちらと覗く程度だったが、千葉にも綺麗な緑がしっかりと目に入る。

 そんな話をしていると、道が少し上り坂になってきた。

「ここから峠ですよ」

 そう言われて気を引き締める。

 大変な峠ではないとはいえ、峠を越えることには変わりはない。

「ここの峠なら大丈夫だと思うよ、軽自動車でも問題ない」
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