年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
「頑張ります」

 そう言って緊張をほぐすように千葉は笑った。

「日勝峠わかる?」

「日勝峠はわかります、場所はなんとなく。自分で運転したことないけど通ったことありますよ」

「あそこ、俺軽自動車で超えたことあってさ、なかなかきつかった」

 そう言って照永は笑った。

「軽自動車で? それはちょっと怖いかも」

「結果大丈夫だったけど、もう軽自動車で日勝峠は通らないかも」

 楽しそうに話す照永の声を聞いて少しずつ千葉の緊張もほぐれてくる。

 峠をどんどん進んでゆき、山の中腹を超えたころだろうか、山の際を通るトンネルが視界の先に見えてきた。

「高いなー、あの道、あれ今から通るんだよ」

 運転しながらの千葉はしっかりと黙視することは出来ないものの、山肌に沿って作られているトンネルを見ると『なんか凄いな』と語彙力皆無な感想が浮かんでくる。

「カッコイイな」

 見えてはいないが、おそらく今照井は笑顔でその道を見ているのだろう。

「ほらほら近付いてきた」

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