年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
 照井が身を乗り出して正面を見ているのが分かる。

「ほらこのトンネル、さっき見てたトンネル。だいぶ登ってきたね」

 トンネルを抜けると照永が感嘆の声を上げた。

「高いなー!」

 千葉には難しいが、道路の脇から外全体を眺めているようだ。

「これだけ登ってきたんだよ」

 その言葉を聞いて、千葉も運転に集中しながらちらりと周りを見回す。

「ほんとだ、山の上って感じ」

「まだ登るからね、運転覚悟してね」

 小さく笑う照永は、このドライブを十二分に楽しんでくれているようだ。

 先日、家族を乗せて長距離移動をした話を聞いたが、照永は車移動が好きなのかもしれない。

 峠道のような、険しい道や山道などの景色も好きなのかもしれない。

 少しずつ傾斜がきつくなる山道を登りながら、子供のように景色を楽しむ照永の好感度が上がった気がする。

 それからしばらく同じように次の山沿いの道を見つけては楽しみ、千葉も坂道の傾斜に合わせてマニュアル車ならではのギアの入れ替えをして運転を楽しんだ。
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