年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
「あ、ごめん。俺間違った。さっきの道右折だったわ」

「ありゃ、間違えてました?」

「16分。さっき8分だったのに増えてる」

 照永の笑い声が聞こえる。

「あはは、倍になってる」

 千葉も一緒に笑う。

「どうします? どこかでUターンしてこの道戻ります?」

「いや、いいよ。目的地の近くで探そう、この道を進めば目的地に着くのは間違いないから」

「この道進めばいいんですね?」

「そう、この道は大丈夫、ちゃんと着くから」

 そう言ってごまかすように笑う照永は、何度か『ごめんね』と繰り返した。

 千葉も照永と2人で出かけられているだけで十分に楽しんでいるし、最初から千葉の方で予定を立てたりしていなかったしで、照永に対して何も不満は無かった。

 そうしてその後も雑談をしながら走っていると照永が急に楽しそうに声を上げた。

「四段滝だって」

「ん?」

 聞き取れなかった千葉は聞き返す。

「よんだんだき。滝があるみたい。こうゆうの寄っていきましょうよ」
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