年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
 照永が四段滝の看板を見つけて数分、車を走らせていると分かりやすく看板が見えてきた。

 速度を落として進んでいくと、トイレ施設や休憩所のような建物がいくつか建っているのが見える。

「ここですねぇ」

 トイレ休憩もかねて千葉は駐車場内に車を停車させた。

 トイレに行き、タバコを吸う。

 タバコを吸いながら照永は千葉に声を掛ける。

「今日、メガネ違う?」

 『あ、気付いてくれた!』そんな嬉しさを隠すように千葉はメガネを一度外し、

「そうなんですよ、コンタクトにして……」

「伊達メガネ?」

「はい、普段履かないスカートも履いて、今日は楽しんでやろうと思って」

 そう言いながら満面の笑顔でスカートをひらつかせ照永にアピールする。

「はは、楽しんでやってください」

 そう言う照永も少し楽しそうだ。



 歩いてすぐのところに四段滝があるそうだ。

 車に鍵をかけ歩き出す。

 滝へと続く道に差し掛かったところでスマホを持って来ていないことに気付いた。

「綺麗だったら写真撮ろうと思ったけどスマホ置いてきちゃいました」

「取りに行ってくる?」

 照永を待たせるのも悪いと思い、

「んー、ちょっと面倒くさいのでいいや」

 と言ってごまかすように千葉は笑う。

 滝は思いのほかすぐ近くにあった。

 これならスマホを取りに行っても大丈夫な距離だった。

 何なら、今から取りに行ってもいいくらいだが、何となく言い出しづらくて諦めた。
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