年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
 照永の車は禁煙車だ。

 車の中でタバコを吸わない癖がついている。

 同じ喫煙者同士、千葉が自分の車でタバコを吸うことをためらう必要はないのだが、なんとなく遠慮してしまっているところがある。

「自分の車なんだし、俺のことは気にしないで吸っていいんだからね」

 この言葉は今日2回目だ。

 非喫煙者を車に乗せている時は本人が大丈夫だと分かれば自由にタバコを吸っている。

 しかしなぜか『車でタバコを吸わない照永』が乗っていると自分もタバコを吸いたい気持ちが湧かなくなっている。

 もうバレていることだが、1日に結構な本数のタバコを吸うことを知られるのが少し恥ずかしいのかもしれない。

 なんて、よく分からない理由を思い浮かべたりする。

「はい、吸いたくなったら吸います」

 千葉ははにかんだ。

 タバコを吸い終わった2人は車に乗り込む。
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