年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
「お昼時だから混んでるかもしれないです」

「少しくらいなら待つよ」

 そう言って入口まで行ったところで、

「予約貸し切りって書いてあるけど」

 と照永が看板を指さした。

「え? うそ、どうしよう」

「聞いてみる?」

「そうですね、ちょっと中に入って聞いてみます」

 入り口の取っ手を引くと扉が開いた。

 そっと中を覗くと客らしき人は誰も居ない。

 『貸し切り……?』

 店員の女性が小走りでカウンターまでやってくる。

「こんにちは、千葉です」

「あぁ! 千葉さん!」

 この店を切り盛りしている兄妹は10年来の知り合いで、よくお世話になっている相手だ。

「貸し切りって書いてたんですけど……」

 ためらいがちに聞いてみると、明日近くでイベントが行われるらしく宿泊客がいっぱいとのこと。

 宿泊客が多いときは、レストランまで手が回らずその時はお休みさせてもらっているとのことだった。
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