年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
「いいと思います、温泉だし、綺麗だし、探していただいたところに行きましょう」

 そうこうしている間に一緒に頼んだ飲み物が運ばれてきて、鹿肉のキーマカレーも届いた。

 ガツンとくるようなカレーではなく、優しい風味を重視したスパイスを使った辛みの少ないカレーだった。

 鹿肉の臭み消しなのか、酸味のある調味料も使われている気がしたが、それを伝えても照永には分からなかったようだ。

 美味しいことには変わりない、体に優しそうな柔らかい風味のキーマカレーだった。

 照永の方が先に食べ終わり、焦る千葉に、

「大丈夫、ゆっくり食べていいから」

 と声を掛ける照永。

 急いで食べてむせたりして恥ずかしい所を見せるくらいならば、甘えてしっかり自分のペースで食べる千葉。

 その間も何かを調べているのか照永はスマホを覗き込んでいた。

 食べ終わって一息ついたところを見計らってか、照永が『そろそろ行きますか』と声を掛けた。
< 121 / 304 >

この作品をシェア

pagetop