年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
「マニュアルはクラッチ踏んだ状態で鍵を回さないとエンジン掛からないですよ」

「エンジン掛かるかな」

「掛けてください」

 そう笑いながら千葉はシートベルトを締める。

 照永は座席の位置を調整した後にエンジンをかけた。

 軽快にエンジン音が鳴る。

「掛かりましたね」

「掛かったね」

「ていうか、なんか自分の車の助手席に乗るって変な感じです」

「あはは、そうかもね」

 照永はそう言いながらギアを入れ替えたりして動きの感覚を掴もうとしている。

「問題はここからなんだよな」

 ギアをローに入れて右足を動かす。

 マニュアル車に慣れていない人は、クラッチの踏み加減で車が前後に揺さぶられ、前進することなくエンジンが危険を察知してストップしてしまう。

 エンジンストップしなかったとしても、揺さぶられたまま低速で前進することになるため、千葉は体をこわばらせその時に備えていた。
< 130 / 304 >

この作品をシェア

pagetop