年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
 『この先にはドア。通り過ぎて廊下にでるだけでしょ、きっとそう』

 期待は無意味。そう言い聞かせて人影に気付かない振りをしていた。

「千葉さん」

 声を掛けてきたその声は、間違いなく照永のものだった。

「はい」

 緊張した面持ちで千葉は照永の方を向き、点呼されたかのようにはっきりと返事をした。

 久しぶりに、まともに顔を見た気がする。

「今みんなパワーポイント使ってるでしょ?」

「そうですね、みんな勉強し始めてましたね」

「僕も手を付け始めたんですよ」

 そう言って照永は自席に誘うように歩き始めた。

 千葉も椅子から立ち上がり照永に付いていく。

「ほら、これ」

 そう言って椅子に座りながら照永は画面を指さした。

「わ、すごい。ちゃんと出来てるじゃないですか」

 千葉は照永の左側に立ち、感嘆の声を上げる。

「意外と出来ました、1日でこれだけ作れたんですよ」

 そう言って机の上に置いてある紙を千葉に向ける。
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