年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
「よっと……」

 照永はそう言って、左手を助手席の後ろに回し、後方を確認する。



 『ドキッ……』



 助手席の後ろに手を回して後方を見る仕草に弱い女性は多いと聞くが、44歳にもなって、ましてやもうすぐ45になると言うのにその仕草に心臓が高鳴るとは思わなかった。

 千葉は自分に驚いていた。

 動揺したのか無意味に右を見たり左を見たりと挙動不審な行動をとってしまう。

 そんな中、車の動きが止まった。

 駐車が終わったものと思いシートベルトを外そうとしたが、

「ちょっと待って」

 照永はそう言って車を前方に動かし、整えるようにもう一度車をバックさせた。

 もちろん、その左手は助手席の後ろだ。



 『ドキッ……』



 え? 2回も? 2回もドキッとするってどういうことですか、私、ねぇ私!



 その後はなんとなく緊張したまま銭湯内に入り、券売機で入浴券を購入、それぞれ浴場内に入っていった。
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