年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
「考えすぎだな」

 そう言って先生は笑った。

 『考えすぎか……あー、そっか。私ちゃんと照永さんのこと気にしてるんだな』

「ラフな格好でなんだっていいじゃん」

 少しでも自分を可愛く見せたいと思っていた千葉はこの時、『あー、そっか、ちゃんと好きなんだな』と気付くことになった。

「あ!」

 施術台を離れて作業していた先生が突然大きな声を出した。

「え?」

「俺持ってるかも」

「持ってる?」

「この時期にいい厚さのパーカー」

 そう言って千葉が居ることも気にせず、生活エリアがある2階へ移動していった。

 少しして戻ってきたその手には1枚のパーカー。

「紫だ」

 ごくごく一般的な可愛げのない男性用のフード付きパーカー。

 青が濃い目の柔らかい色合いの紫色のパーカーだった。

「俺が着てちょっと小さいやつだからこれ着れるんじゃないか?」
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