年上男性にてのひらの上で転がされて困っています



 6月12日

 この日はとにかく忙しかった。

 理不尽な指示も多かった。

 腹が立ってしょうがない時間もあった。

 喫煙室でタバコを吸う時は座り込んでうつむき、『話しかけるなオーラ』を纏っていた。

 それでも千葉は子供ではない。

 世の中は理不尽で溢れ返っていることなどとうに知っていることだ。

 気持ちを落ち着かせて淡々と仕事をこなし定時になる頃には平常心を取り戻していた。

 そんな日の帰り道。

 駐車場まで向かう道中、照永と一緒になった。

「今日は午前中あんなにヘロヘロだったのに、よく持ち直したね、えらかったね」

 そんな言葉をかけてもらった。

 確かに頑張ったのだ。

 今日の千葉は頑張った。

「えへへ、がんばりました。いやでもちょっとやめて、泣いちゃう」

 そう言って歪みそうになる顔を必死に笑顔でごまかす。
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