年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
 仕事中に照永さんに雑談を持ち掛けるのをやめて。

 照永さんが退勤するタイミングを計るのをやめて。

 駐車場まで一緒に行くのをやめる。

 ゆっくりでいいから。

 やめていこう。

 十数年ぶりにこんな切ない気持ちを味わせてもらったんだから、それでもう十分だよ。




 千葉は車のエンジンをかけるとゆっくりと発進し自宅までの道を走り始めた。




 6月13日

 朝、いつも通りの時間に目が覚めたが仕事に行く意欲が少なくしばらく布団の上で座り込んでいた。

 準備をする時間が迫ってきてやっと動き出したが、髪の毛をセットする時間が無くなってしまう。

 『今日は何もしないで行こう』

 ここしばらく髪の毛が伸びてきていたこともあり、髪の毛をまとめたりセットしたりと手をかけていたので髪の毛を下ろしたまま仕事に行くのは久しぶりだった。

 『やっぱりちょっと邪魔くさいな』

 揺れる髪の毛を気にしながら仕事へ向かう。
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