年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
 照永が声を掛けた上司からは千葉へ何の接触も無かった。

 体調が悪いこと、疲れていること、そう言ったことを千葉は隠す節があるが、喫煙室でうなだれている千葉の状況を照永はちゃんと見てくれていたのだ。

 他の誰にもろくに労ってもらった記憶は無い。

 疲れている千葉をそっとしておいてくれて、上司には進言してくれていた照永。

 『やっぱり優しい人だな……』

「そうなんですね」

 ありがたい、その気持ちで胸がいっぱいになってお礼を言う余裕が無かった。

 そのまま車に乗り込み、思った通り誕生日プレゼントなど無かったが楽しく会話をして車を走らせる。

 そろそろ照永の家が近付いてきた頃、千葉はこう聞いてみた。

「私も今元気だったり疲れてたりしてますけど、2人とも元気な時にまたお風呂屋さんに行きませんか?」

 と。

「行きましょう」

 照永は即答して続ける。

「岩盤浴に行きたいんですよね」
< 299 / 304 >

この作品をシェア

pagetop