年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
「何だよそれ!」

 他に患者が居ないのをいいことに声を張る先生。

「自分から誘っておいて? 行きたいんですかって? それはちょっとどうなのよ」

「いやでもね、嫌な感じの言い方じゃなくて、なんて言うか楽しそうに? というか、からかう感じもあったけど、なんか……よくわかんなくなっちゃった」

「確かにわかんないな、俺も分かんない」

「忙しいって言って、その後は暇だって言って、それで『行きたいんですか』って。もうわかんない」

 そう言って困ったように苦笑いをする千葉。

「よし、もうしばらく連絡するな。連絡しなかったら向こうが何か考えるかもしれないし」

「うん……しばらく連絡するのは控えようとは思ってはいるんですよ。でもなんか気になっちゃって」

「だめだめ、向こうに試されてるんだとしたら、こっちも試さないと」

「ですよねー」

「我慢するんだぞ」

 先生は千葉を指さしてニヤニヤと笑いながら続ける。

「連絡しちゃだめだからな」

「我慢するー。けど、何か送っちゃいそう」

 そう言って口元を緩める千葉。
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