年上男性にてのひらの上で転がされて困っています
「だーめだって」

 人のコイバナに首を突っ込むのがよほど楽しいのか先生は笑顔だ。

「我慢。我慢我慢!」

 真似るように千葉も『我慢我慢』と呟く。

「それかあれだ、忘れろ」

「忘れろってかい」

 千葉は声を出して笑った。

「はかない恋は夢物語だったってな」

「恋まで行ってないんですけど」

 そう言って軽く笑う。

「銭湯も忘れろ!」

 そう言って先生は大きく笑った。

「あはは、銭湯も忘れるのかー、ちょっと寂しいかも」

「寂しくない、まだ傷は浅い。期待しまくってからの残念は深い傷になるからな」

「そうね、お風呂楽しかったねーで終わらせておくのが丁度いいのかもね」

「まぁあれだ、出かけようってのはその場のノリってやつだったかもしれないしな」

「確かに、話が盛り上がって勢いで楽しく会話しちゃったみたいなね」

「そうそう、そんな感じだったかもしれないよ」

「じゃあしょうがないか、ノリだもんね」

「はい、それじゃあ湿布貼ったしおしまい」

 そう言って先生はカーテンを閉めて受付まで移動していった。





 そうだなー。やっぱりしばらく連絡するのやめよう。

 次の出勤は金曜日、せめてその日までは何も送らないでおこう。




 服を整えた千葉は会計と挨拶を先生とかわして帰路についたのだった。
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