今を生きる君とこれからも
四章・今
俺は昔から病弱で、友達もろくにいなかった。みんな小学生になって、ランドセルを背負って、勉強したり、好きな人を作ったり。毎日楽しそうに学校に行っていた。
昔から病院で過ごしていたから別にランドセルだって背負わなくてもいいし、学校だって興味はない。よくあるやつで、俺は学校に行きたくても行けないっていう子じゃない。
もう少しで、この治療も終わって、嫌でも学校に行かなくてはいけなくなる時がくる。
でも、実際そんなに甘くはなかった。小六になっても俺の病気は治ることはなく、むしろ症状は悪化していった。寝ているだけでも苦しくて、生きているのが辛い。いっそ、死んだ方がましだと思ったときもあった。そんな時、俺は彼女に出会った。
「うっ、うっ。」
なんでこの子は泣いているんだろう。それは俺が少し体調がよく、看護師さんに少し病院内を散歩してきたら?と言われて、確かに最近あまりあるいてなかったから、少しは運動しないとと、廊下を歩いていたとに。
「ねえ、お前どうしたの?」
「うっ、うっ。」
「おい。」
「え?」
彼女は涙でぐちゃぐちゃになった顔でこっちを見てきた。その顔は悲しみ、後悔、苦しみ。
負の感情を全て合わせたかのような顔だった。
「どうしたかって聞いてんの。」
「友達が、病気になっちゃた。でも全部私のせい。私が死ねばいいんだ。」
「っ!お前。……言っとくけど、俺も病気だからな。でも、そんなことでそんなに泣いてたら体の水分なくなって死ぬぞ。」
「え。わああぁん!」
「お、おい、冗談も通じねえのか。」
俺はこの子になんて声をかけてあげればいいのか、変に気に障るような事言ったらまたもっと泣きそうだし。
「あのな、人生泣きたいことだって、死にたい時だってあるよ、俺だって病気で何度も死にたいって思った。だけど、まだお前にもお俺にも未来があるんだよ。それなのにこの大事な「今」をこんな思いでにしていいのかよ。俺は嫌だ。なんでかって?俺の人生はいつ終わったってもおかしくない。だからこそ俺は「今」を大切にしてる。だからいくら治療が辛くても、病気が進んでるって聞いた時も、俺は諦めない。絶対に死んだりしない。だから、
「今」を精一杯生きる!たとえ何があろうと俺はいつでも「今」を思い出して、俺はまだ
生きてるんだ!って照明するんだ!それの何が、私が死ねばいい?お前はそれの意味わかってんのか!死ぬんだぞ!この俺の前で。まだ生きられるやつがなんでもうすぐ死ぬかもしれないやつにこんな事言われてんだよ!」
「お兄ちゃん。死んじゃうの?」
「ああ、もうすぐな。だから俺がお前の友達に言っといてやるよ。だから、
お前は何があっても死んだりすんじゃねえぞ!」
「嫌だ!そんなの嫌!」
「バカ、嫌だって言って治るもんじゃねえんだよ。」
「お兄ちゃんも生きるんでしょ?」
「っ!バカ!知らねえよ!」
……なんだよ、俺が死んでどうすんだ。俺は生きる。絶対。それであいつに見せつけてやるんだ。俺は今お前と一緒に生きてるんだぞって。
「お兄ちゃん。ありがとう!」
「っ!別に。」
なんで俺なんかがお礼を言われなきゃいけないんだよ。俺はただ最近の愚痴を話しただけなのに。むしろ俺の方が感謝してるのに。

「瑠夏!行くわよ!いつまでもそこでうじうじ泣いてたって駄目でしょ。病院の人に迷惑でしょ。」
「はあい。」
瑠夏。
「お兄ちゃん!またねっ!」
彼女は大きく手を振りながらなんの屈託もない晴れやかな蔓延の笑みを浮かばせていた。
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