今を生きる君とこれからも
ガラッ
居ない。
やっぱりはずれ。駄目おしみで病院にも行ってみるか。
私はGogglesMapを開き、一生懸命探した。
あ、これだ。意外と近い。その場所は、学校の裏山の頂上の近くを指していた。
でも、病院ってこんな山奥にあるもんなのかな。とりあえず行ってみよう。
「あ、雨、止んでる。」

はっ、はっ、はっ、はっ。裏山ってこんなに高かったけ?道らしきものはあるけど絶対この2、3年整備してないだろ。うわ、、、。
目の前には「立ち入り禁止」と書かれた看板が立っていた。でもその奥の道には誰かがあるった足跡が見えた。晴。瞬時にあの顔がフラッシュバックする。居る。絶対この先に
晴は居る!
鎖を思いっきりまたぐとそこにはさっきの雨でぬかるんだ道がつづいていた。
だがそんなことはどうでもよくて、私の頭の中は晴のことしかなかった。ぐちょぐちょの
地面を思いっきり蹴って、飛び散った泥が足に付く。泥に足を取られて何度も転びそうになったが何とか走り続ける。あと、もう少し。あともう少しで晴に会える!
はっ、はっ、着いた。丘の頂上。晴と初めて出会った場所。ここだ。
「はるっ‼」
「瑠夏。本当に、本当に来てくれた。そんな、そんなに泥だらけになって、息を切らして、こんな、こんな僕の為に。」
「晴。」
「会いたかった。ずっと。」
「うん。僕も。」
「いや、私の方が会いたかった。」
「そんなことない。」
「そんなことなくない!私の方がずっとずっと晴の事が好きなのっ!そうじゃ、そうじゃなかったら、こんなに会いたいなんて思わないっ!だから、だから、もう、心配させるようなことしないでよ。」
晴は固まっているのかのように何も言わない。なにかおかしい。
「瑠夏、僕、大事な話があるって言ったよね。」
「うん。」
「じゃあ、そろそろ話そうか。」
「僕の過去を。」
「僕は昔から体が弱かったってことは知ってるよね。まあ、そのことで親と祖母たちが喧嘩しててさ。いつも家にいる時は具合が悪かった。正確には居心地が悪かったのかな。それで、僕の病状が悪化していってからそこの関係はもっとひどくなっていったんだ。僕はもう、その環境に耐えきれなかった。だって、全部、俺のせいじゃん。俺がもっとちゃんとしてれば普通の子たちみたいになれてたし、お母さんたちもあんな風にならなかった。俺が、俺が居なかったら、俺が産まれてなんてか来なければ、もっと、、、みんな、幸せだった。」
「それから、病院に入院しても誰もお見舞いになんか来なかった。看護師さんもびっくりしてたよ。まだこんなに小さいのに誰もお見舞いに来ないなんて、可愛そうだって。でも、俺にとってはそっちの方が良かったんだ。でも、その看護師が親に行ったらしくて、それを俺が言ったんじゃないかって怒られた。余計な用事を増やすなってさ。とんだ親だよな。こんな病状でも、こんな年じゃ死なないだろ、とか思っててさ、異常に冷たかった。親も仕事が忙しいらしくて、そんなに頻繁には来なかったけど、お見舞いに来るようになったんだ。
でも、こんな親でも幸せになってほしいって思うんだよ。入院している時にずっと考えていた。俺の未来。親たちが仲良くしている未来。でも、そんなこと考えている暇があったならもうちょっとましなこと考えていれば良かったな、って今は思ってる。結局、小4の時には一回治ったんだけどさ、中2の時に再発して、お前はまだ迷惑をかけるのかってめっちゃ言
われたな。別に、俺だって再発したくてしたわけじゃないのに。祖母たちも、親には反発してるのに、俺には一切会いに来てくれない。段々、俺も寂しくなってきたんだよな。この年になって、誰も俺の事を見てくれる人が居ないんだ。って。その時に思い出したんだ。瑠夏のこと。誰も俺の事を見てくれなくても、俺が守りたいと思える人がいる。俺はその人を守るために、この命を使うって決めた。それからは、体調がわりと良い時や、外出が許可されている日などは外にでて、普通の男子学生になれるように勉強した。
いつか、あの子と同じ学校に行けるようにと。でも、よかった。瑠夏と同じ学校に入れて、たくさん話せて、たくさん遊べて、色んなことをたくさん知れて、俺の事をちゃんと見てくれる人がいるって気がつけて。本当にこの一年は楽しかった。改めて礼を言うよ。」
「ありがとう。瑠夏。そして、」
「あー、もう、この話をするためにここに呼んだの?まあ、いいや、行こう。晴。」
「え、どこに。っていうか、話がまだ、」
「どこでもいいでしょ。」
「え、あ、いや、あの。」
「無理でも連れていく。死んでも連れていくから!」
「だ、だから、どこに!」
「もう、うるさいっ!黙ってついてきて!」
「な、なんで。」
「こんな話聞かされてた方にもなってよ。いくら何でも、私にする話じゃないでしょ。」
「え、俺は、瑠夏のためを思って。」
「第一人称変わったね。あの頃と同じになってる。」
「あ、あぁ!」
「きずいてなかったんだ。じゃあ、行こ。」
晴の手をとり、裏山を降りて行った。
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