今を生きる君とこれからも
「晴。実家ってどこ?」
「え?実家?多分、霜引き浜の近くだと思う。」
「多分んって、自分の家でしょ?」
「いや、入院してから戻ってないから。」
「そうなの?じゃあ、ずっと一人暮らし?」
「まあ、そんなとこ。」
「学校とかは?」
「そういうのは、勝手に親がやってたから。」
「自分勝手だね。」
「そうなのかな。」
「うん。だって、自分の子供、大事にしない時点で自分勝手だよ。」
「でも、なんで実家なんか聞いたの?」
「え?だって、行先が分かんないと行けないじゃん?」
「行くの⁉」
「行くに決まてるじゃん。私がちゃんと会って話す。」
「なんで。なんでそんなに。俺の為に。」
「当たり前でしょ。私はもう過ちは繰り返さないから。もう、あの時、言葉は凶器にもなるってわかったから。今度はその凶器で戦う。あと、『過去』って、過ちが去るって書いて『過去』でしょ。だから、過去の過ちは今とは関係ない。もう、去っていった事だから。て言っても多分これも、私の自己満足なんだけどね。これで千穂ちゃんとのことも考えるのは最後にする。やっとわかったから。今、私がしなくちゃいけない事が。」
「そっか。じゃあ、任せるよ。家の場所、案内するね。」
「ありがと。」

砂浜の奥には広く、果てしない海が広がっていた。潮が顔にべとつくが気にしないで歩く。
もっと強く。強くなる。もう、自分に負けないくらい。


防波堤を歩いた先には小さな家があった。
「ここが晴の実家?」
「そうだよ。」


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