今を生きる君とこれからも
「瑠夏。ごめん。待たせちゃって。今日は帰れなそう、、、。八時に父さんが帰ってくるからその時にまた話そうと思って。」
「そっか。晴、体調の方は大丈夫?」
「うん。最近落ち着いてきてるから大丈夫。それでさ、今から海で遊ばない?」
「え!やったー!行こ行こ!」
「わぁ~‼綺麗っ!」
「夜の海の綺麗なんだよ。」
「へぇ~!そうなの!見てみたい!」
「じゃあ、後でまた見に来ようか。」
「うん!」
「はる、はる!見て!ヤドカリ!きゃぁっ!」
「わぁ!どうした!」
慌てて瑠夏に駆け寄ると、ヤドカリに指挟まれちゃった。と笑いかけてきた。
「大丈夫?それ、無理に取らない方がいいと思う。そのうち離してくれるよ。」
「えー!痛いのにぃ!」
「我慢、我慢。たまにはこういう事もあるってことだよ。」
「はーい。」
瑠夏はムスッとした顔でこちらを見てきた。可愛い。今はそんなことまで考えていられる余裕があった。
「そろそろ、帰るよ。」
「はーい。」


実家に戻り、父さんを待っていたときふと思った。瑠夏は疲れたといって隣で寝ているが、
瑠夏は今までどんな気持ちで生きてきたのだろうか。昔に友達をなくしてから、自分の思うように行動ができなくなって、楽しい学校生活が送れていたのだろうか、もし、俺だったらそんな、楽しくは送れないだろう。いつも自分を押し殺し、自分の思いを伝えない。そんなものを楽しいとはいえるのだろうか。少なくとも俺は楽しくはない。それを考えると、勉強をすることで他の事を考えなくて済むし、頭もよくなる。俺も入院している時に、こんな事ばかり考えていないで、勉強でもしていれば良かったのかもしれない。今思うと、後悔ばかりだな。
ピーンポーン
チャイムが鳴った。父さんが帰ってきた。

「ただいま。」
「おかええり。父さん。」
「早速、話始めたいんだけどいいかな?」
「あぁ、そういうと思ってもう食事は済ませてきてる。」
「なら、話がはやい。じゃあ始めよう。」



「まあ、どうだ、最近は。高校生活は。」
「すっごい楽しいよ。」
「そうか、良かったな。父さんたちも楽しくやってるよ。」
「それならよかった。」
「じゃあ、本題にはいる。」
「父さん。俺は五歳の時に発症した病気が治ったわけじゃない。まだ、この病気は俺の体をゆっくりと蝕んでいる。俺は今でも覚えているよ、父さんに、別に死ぬ訳じゃないんだろって言われたこと。それはあの藪医者のとこなんかに行ったからだ。俺はそのあと、ちゃんとした病院に行ったら、ためらいがちに真実を告げられた。死ぬんだよ。俺は。いつ死んでもおかしくないんだよ!」
「だからなんだ。俺に何をしろって言う。」
「はぁ?お前はいつもそうだ。俺のことなんて一切考えてくれやしない。全部我が身可愛さで動いている。だってそうだろ?俺は父さんが不利な状況にたっているところなんか見たことない!全部そうだ、俺が病気になった時、すぐに叔母たちに連絡したのは父さんだった!今思えばあれがきっかけだったんじゃないか!そして、それをこの計算高い父さんが分かっていなかったなんてあり得ない。全部分かっててやったことだったんだろ。そうすれば、母さんと叔母たちの戦いになって、自分はその子供の父親という有利な立場のままでいられるし、いつでも逃げられた。父さんにとって今までで一番完璧で、一番有利だったんじゃないか?」
「ふん、よく考えたもんだな。あの頃もそのくらい考える力があればそんなに苦しまなくて済んだんじゃないか?よく考えてみろ、あの状況はお前が唯一変えることができたんじゃないか?俺はそんなことされたらひとたまりもなかったね。お前の言う通り、あれは今までにない、一番有利な状況だった。でも、それだからこそ、簡単に崩れてしまうんだよ。そうだろ?どんなに頑丈で難航不落の城でも、兵役が弱かったかもしれない。どんなに美人でも性格がとてつもなく悪いかもしれない。つまり、いっぴとたりとも隙がなく、綻びがないものなんてないんだよ。だから、確かに一番有利であっても、その分一つパーツが抜けることで大きな被害がでる、だから完璧なんかじゃないんだよ。まあ、そこまで考えれなかったか。
所詮、そんなものだからお前の人生はそうなる。」
「勝手に人の人生で遊ぶなよ。」
「遊んでなんかいない。試していたんだ。その完璧へとね。」
「俺はな、病状が悪化してきてそろそろ自分でも死ぬなって思ってた時があって、その時に急に気持ち悪くなってもう正直、半分諦めてたよでも、目が覚めたらそこは天国、いや、地獄ではなくある一画の病室だったんだよ。そのとき思った。簡単に諦めちゃいけないって。いつかは助かるかもしれないって。だから俺はどんなに病状が悪くなっても自分に言い聞かせた。諦めるな。まだ生きれる、俺にはまだたくさん時間がある、こんなところでしにたくない、生きたい、生きて、生きて、生きて、そしていつかは自分の意志で死にたい。
こんな病気なんかに負けてたら今後の人生、もっと強い奴がいる、もっと嫌なことがある、もっとつらいことがある。でも、それを乗り越えた先にはどんな楽しいことだって待っているし、どんなに嬉しいことだってあるかもしれない。そんな未来をいま、ここで諦めて捨てるな。ってな。だから、お前らみたいな最低な親でも俺はこんなに楽しく今を生きている。
ざまあみあがれ。このクソ爺っ!」
「っ!お前ぇ!言っていいことと悪いことがあるだろう!自分の立場を弁えろ!」
「はぁ?」
「そういうとこだ!そんなんだからこんな人生になるんだ!」
「別にお前らのおかげで考えられるようになったし、おかげさまで今はくっそ可愛い彼女とラブラブして毎日を満喫してますけど?それに、言っていいことと、悪いことって、お前が言えること?俺、散々お前にその悪いことっていうやつ言われてきたけど。もうちょっと言葉の意味、勉強したら?あ、もしかしてそういうところが父さんの弱点かな?自分の予想外のことが起きると冷静に物事が考えられなくなること、とか?」
「いい加減にしろ、今すぐ家から出ていけ。二度と帰ってくるな。病気がまた再発しても金も出さんからな。いいか、全部お前のせいだ。」
「いいけどさ、逆に父さんの方からとか来ないでよね?金とかも貸さないし。」
「もちろんだ、分かったならさっさと出ていけ。」
「はーい。」
「さよーならー。」




< 20 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop