今を生きる君とこれからも
疲れた。あれからというもの息が続かない、一気にあんなに喋ったのがいけなかったのかな、それにしても俺ってあんなに性格悪かったのか、ちょっとショック、、、。
はっはっはっはっはっはっ、それにしても初めて父さんに勝てた。これで少しは勇気がでたかもしれない。これで一切父さんたちのことを考えないでこの病気と闘っていける気がする。

そんな気も、いつかは消えてしまうんだろうな。

あ、瑠夏のこと待たせてるんだ!



「瑠夏っ!ごめん、って寝てるか、でも今すぐ出てけって言われちゃったしなー、もうこんなに暗いし、どうしよう。」
「ん、晴?あ、話、終わった?」
「あ、起こしちゃった?」
「ううん、結構寝てたから、丁度いい。」
「じゃあさ、ちょっともう一回海、見に行かない?」
「あ、いいね。行きたい!」
「はっはっ、良かった、出て行けって言われちゃったから瑠夏寝てるしどうしようって思ってたとこ。」
「そうなの⁉じゃあ、行こう!」
「うん。」


ザァァァァァァァァァァァ
波が迫ってくる音が静かな夜に響き渡る。海は満潮を迎え、さっきまであった砂浜は消え、海に飲み込まれていた。夏ならではの満月も空に浮かび、神秘的な雰囲気を醸し出していた。そして、水面には、月の光が海に反射してもう一つの月が出来上がっていた。そうだ、これを見せたかった。
瑠夏に、この夏にしか見られない、俺が毎日見てきたこの景色を。

「き、綺麗ぃ~!まるで海の中にも世界があるように見える!すごい、なんか、宝石みたい。」
「宝石?」
「うん。なんか月の光に照らされて光っている海水が、散りばめられた宝石みたいなの。」
「うんとね、えっと、あ!あれ!あのー、なんだっけ、っ!そう!瑠璃だ!瑠璃みたい!海の色と月の色が合わさってそんな風に見えるの!」
「確かに、言われてみればそれにしか見えなくなってくる。」
なんとも、彼女の比喩は見事なものだ。人を引き寄せる力がある。
「でしょ!」
「でも、なんだか寂しそう。」
「え?」
「ううん、何でもない。それより、いつも見ている海にもこんな一面もあるんだね。びっくりしちゃった。」
彼女はとびっきりの可愛い笑顔で笑った。
そう、この笑顔が好き。大好きだ。


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