私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま

日常

 ベッドの上の安らかな静寂はスマホのアラームで切り裂かれた。
 重いまぶたをゆっくりと開けて、二階堂(にかいどう)(あや)は安堵する。
 カーテンの隙間からうっすら差し込む光。柔らかな枕。重だるい身体が現実感に包まれている。

「生きてる……」

 だけど、幸せかと言えばそうでもない。生きていたって良い事なんて何もない。

「はあ」

 自分の物とは思えないほど重たい身体を無理矢理起こして立ち上がる。
 呼吸を整えながら彩は、二階の自室から一階のキッチンへとゆっくり降りて行った。
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