私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま
(あ……やばい)

 手元にあるのはウーロン茶のはずだった。
 だけど彩が飲んだのはウーロンハイである。口の中に残るアルコールの感じ的に、間違いない。きっとさっきの友人がグラスを間違えて持っていってしまったのだ。
 彩は口元をおさえた。

「二階堂さん、どうかした?」

 フリーズしていた彩に高橋くんが問いかける。

「あ、えっと。グラス間違えたみたいで、これウーロンハイだったの。今日はお酒飲まないようにしようと思ってたから、ちょっとびっくりしちゃって」

 しかも結構な量を一気に飲んでしまった。飲み干すまで気付かないなんて、いくらなんでも間抜けすぎる。

「大丈夫、二階堂さん。お水もらおうか。――すみません、お水一杯ください! 身体の事もあるし、お酒を控えようとしてたって事だよね。もし具合悪くなりそうだったら言って。対応する」
「ありがとう高橋くん。でも私、お酒飲めないわけじゃないし、念のため用心してただけだから。たぶん、大丈夫だと思うんだけど……」

 話していると高橋くんは急に立ち上がり、彩の隣の椅子を彩の椅子にぴったりくっつけてそこに座った。

「しんどくなったら僕に寄りかかって良いから」

 彩の肩に触れる位置に高橋くんがいる。彼が動くたび、フワッと爽やかな香りがした。柔軟剤かな。生活感のような生命力のような、高橋くんの「生」をとても感じた。

「……ありがとう」

 近くに人が居てくれる。そんなぬくもりに包まれた彩は、なぜだか彼の顔を見られなくなってしまった。
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