私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま
 胸がドキドキする。
 いつもはゆっくりゆっくり鼓動を打っている彩の心臓が、高橋くんがしゃべるたびに高鳴り、元気すぎるくらい動いてしまう。苦しいような、楽しいような、生きている実感が彩の身体を巡っていく。

「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるね」

 二人きりで少し話したあと、彩は立ち上がった。

「気を付けて」
「ふふ、大丈夫だよ」

 お手洗いくらいで心配されるのが可笑しくて、彩は笑いながら歩きだした。
 と、同時にトトッと心臓が変な動きをした感覚があった。
 よくある不整脈だ。疲れてくると起きやすいし、心配するほどでもない。

 そう思いながら一歩二歩進んだところで、またトトトッと心臓が走る。
 よくある不整脈だけど、連続するのは望ましくない。血液循環が成り立たなくなってしまうからだ。
 そのうち、彩の目の前はサアッと暗くなっていった。

「二階堂さん!」

 高橋くんの声を聴いたのを最後に、彩は気を失ってしまった。
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