私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま
「僕は別に二人きりだからって変な事をしようなんて考えてないからね! まいったな……告白したタイミングでこの状況じゃ警戒するかもしれないけど、医師免許に誓って絶対に変な事はしないから!」

 慌てふためく高橋くん。狭いホテルに二人きりというこの状況が、急に別の意味を持ち始める。

「……ぷっ。あは、あはは」

 必死に釈明しようとする彼が可愛くて、彩は思わず吹き出してしまった。

「わかってるよ。信用してる。高橋くん、昔から正義感があったもんね」

 彩が笑い飛ばしたことで、高橋くんは少し安堵したようだった。

「え、そうかな。正義感だなんて、そんなこと初めて言われた。二階堂さんはなんでそう思ったの?」

 口元に手を添えた高橋くんが首をかしげる。無自覚なのか、と思った彩は当然のように昔を語った。

「だって高橋くん、係の仕事とか委員会活動とか、他の人たちが途中で投げ出しても最後まで責任もってこなしてたじゃない」

 教室で飼っていたメダカの餌やりも、掃除当番も、日直の仕事も、どれも最後まできちっとやるのが高橋くんだ。彩はいつもそんな彼を立派だなと思っていた。
 高橋くんが困ったように頬をかく。

「いや、みんなに仕事を押し付けられてただけとも言うんだけどね。僕、いじめられがちというか、弱い立場だったから。……なんか格好悪いな」

 高橋くんの口から「ははは」と乾いた笑いが漏れた。彩はそれを見て、横になったまま首を振る。

「そんな事ない。格好良かったよ。頑張ってるな、凄いなって思ってた」

 彩の言葉に高橋くんがはにかむ。

「……そういうとこなんだよなぁ」

 高橋くんは顔をくしゃくしゃにして、ベッドの端に顔をうずめた。
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