私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま
「ほんとそういう……はあ」
「な、なに?」

 ベッドに向かって潰れている高橋くん。そんな彼を見て、彩は困ってしまった。彼が何を言いたいのかわからない。
 しばらくして高橋くんはわずかに顔をあげ、上目遣いに彩を見た。

「二階堂さんっていつもそうやって褒めてくれたよね」
「え?」
「僕が一人で何かしてる時、クラスのみんなは誰も僕なんか気にも留めなかったけど、二階堂さんはいつも『餌あげてるの? 偉いね』とか『日直頑張ってるね』とか、いつも声をかけてくれた。それが凄く嬉しかったんだ」

 そんな当たり前の事を喜んでくれていたなんて、彩は思いもよらなかった。

「だって、本当にそう思ったんだもん。ほら私、病気のせいで自分の仕事さえ満足に出来ない事が多かったでしょ。だから他人の分まで頑張る高橋くんの事、尊敬してたんだよ」

 高橋くんの内面の美しさはクラスで一番だと彩は認識していた。彩はただそれを伝えていただけだ。特別な事をしたわけではない。けれど高橋くんは深い感謝を伝えてくれる。

「僕がその言葉にどれだけ救われたかわかる? なんの取り柄もなく弱い僕が、二階堂さんのその言葉で強くなれる気がしたんだ。楽しくなかった学校も、二階堂さんが居てくれたから休まず通う事が出来た。二階堂さんが居なかったら今の僕は無かった。僕は二階堂さんにすごく感謝してるんだよ」

 高橋くんの口から感謝と愛情が次々あふれてきて、彩はそれに飲み込まれた。心地よく温かい響きにおぼれそう。愛情の海の中で高橋くんが彩の手を握る。

「僕は二階堂さんが好きだ。二階堂さんに救われた人生、今度は二階堂さんを救うために生きていきたい。二階堂さんの力になりたい。支えになりたい。僕は一生をかけて、二階堂さんを救いたい」
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