私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま
 家族。
 迷惑をかけて、恨み、恨まれる関係。
 そう思った彩は泣けてきた。

「家族なんて、そんなものになりたくないよ、私」

 家族というものが怖い。

「私、高橋くんに迷惑かけたくない。いい年して一人で生きられないなんて、情けなくて、惨めで、つらい」
「じゃあ、なおさら元気になろうよ、二階堂さん」

 そんな提案をする高橋くんは、彩の知っている「家族」とは違う話をしている気がした。

「僕を頼って。僕に甘えて。助け合おう。支え合おう。それを気兼ねなく出来るのが家族だよ。僕は二階堂さんとそんな関係を築きたい。元気になろう、一緒に」

 一緒に。
 彩の両親がそんな事を言ってくれた事は一度もなかった。
 助け合い、支え合うのが家族なら、それはなんと温かい事だろう。
 触れてみたい。家族というものを噛みしめてみたい。
 彩はそう思った。

「高橋くん、私を家族にしてください」
「もちろん、よろこんで」

 それから二人は今まで会えなかった時間を埋めるように色んな話をした。
 時間はあっという間にすぎて、疲れが残っていた彩は高橋くんに見守られながら眠りにつく。こんなに心地よく安心感のある眠りは、彩の人生で初めてな気がした。
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