私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま
 それから彩は北斗の勤める病院で何度も検査を受け、手術の方針を決めていった。
 北斗は主治医ではなかったけれど、彩の診察時には極力顔を出してくれて、病院と彩の橋渡しとして丁寧にやり取りをしてくれている。

 先天性の奇形がある彩の心臓は、二十年以上前に手術をしたきりである。
 今では医学が進歩し、彩の受けた手術も術式が大きく変わった。今までの手術では術後の心臓への負担が大きすぎたのだが、最新の術式では負担を軽減する新たな方法が確立されたのだと言う。

「だからつまり、この手術を受ければ今までみたいに苦しくなったり息切れしたりという事が減るんだ。日常生活がもっと楽になるって事だよ」

 病院のカンファレンスルーム。
 術前説明をする循環器内科医と心臓外科医、そして北斗と彩が向かい合って話し合いながら、北斗は彩に説明した。

「元気になれるなら、すごく嬉しい」

 彩の返事に心臓外科医が難しい顔をする。

「ただ、大人にこの手術をした例がありません。また、高橋さんの心臓はすでに酷使した後です。回復の早い子どもと違い、リスクが無いわけではありません」

 リスク。それは生きるか死ぬかという話だ。話の重さに、「高橋さん」と呼ばれたくすぐったさもすぐに吹き飛んでしまう。

「承知しています。でも、このまま生きていても迷惑をかけるだけだし、元気になれるなら手術を受けたいかなと思っています。それに、私の病状は手術推奨レベルなんでしょう?」

 尋ねる彩に北斗が頷く。
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