私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま
「介護が必要になるくらいなら手術なんて受ける必要もないだろう。まったく何を考えているんだ、彩は」
「本当よ。どれだけ他人に迷惑をかければ気が済むの」
「しかし障害の等級が上がれば貰える年金も増えるんじゃないか?」
「増えたって一万、二万の世界でしょ。冗談じゃないわよ。介護になったら割に合わないわ」
これが彩の日常だった。それを目の当たりにした北斗は肩を震わせる。
「何の話をしているんですか! あんまりじゃないですか! 彩さんは今、元気になろうとしているんですよ! 頑張ってるんですよ!」
声を荒らげた北斗を、両親はせせら笑う。
「頑張る? 私たちはあの子が生まれてからずっと頑張ってきたのよ」
母が言う。
「貴方は私たち家族がどれだけ苦労してきたか知らないでしょう。私たちはね、もう三十年近くあの子に人生を奪われてきたの」
隣の父も頷いている。
「そうだぞ。俺たちはずっと苦労してきたんだ。金ばっかかかって死ぬまで介護だなんて、俺たちの人生はどうなると思ってるんだ」
「本当、そうよね。いっそこのままあの子が死んでくれたら死亡保険金が入るのに」
「確かにな」
両親がガハハと下品な笑いをする。
「なっ」
カッとなった北斗が母親に掴みかかろうとした。
「なんてことを言うんだ!」
北斗の手を父親が掴む。
「お前こそ何をする気だ!」
男同士が取っ組み合いになり、母親はオロオロと後ずさった。北斗は彩の父の胸倉をつかんでいる。
「彩さんは今頑張ってるんですよ! よくもそんな事を言えますね!」
「うるさい! お前には関係ないだろう! 他人は引っ込んでろ!」
怒鳴り声が部屋中に響く。それを聞いた看護師が数人、慌てて待合室にやってきた。二人を無理矢理引き離し、落ち着かせようとする。
その時、室内の電話が鳴った。
それは手術終了の連絡だった。
「本当よ。どれだけ他人に迷惑をかければ気が済むの」
「しかし障害の等級が上がれば貰える年金も増えるんじゃないか?」
「増えたって一万、二万の世界でしょ。冗談じゃないわよ。介護になったら割に合わないわ」
これが彩の日常だった。それを目の当たりにした北斗は肩を震わせる。
「何の話をしているんですか! あんまりじゃないですか! 彩さんは今、元気になろうとしているんですよ! 頑張ってるんですよ!」
声を荒らげた北斗を、両親はせせら笑う。
「頑張る? 私たちはあの子が生まれてからずっと頑張ってきたのよ」
母が言う。
「貴方は私たち家族がどれだけ苦労してきたか知らないでしょう。私たちはね、もう三十年近くあの子に人生を奪われてきたの」
隣の父も頷いている。
「そうだぞ。俺たちはずっと苦労してきたんだ。金ばっかかかって死ぬまで介護だなんて、俺たちの人生はどうなると思ってるんだ」
「本当、そうよね。いっそこのままあの子が死んでくれたら死亡保険金が入るのに」
「確かにな」
両親がガハハと下品な笑いをする。
「なっ」
カッとなった北斗が母親に掴みかかろうとした。
「なんてことを言うんだ!」
北斗の手を父親が掴む。
「お前こそ何をする気だ!」
男同士が取っ組み合いになり、母親はオロオロと後ずさった。北斗は彩の父の胸倉をつかんでいる。
「彩さんは今頑張ってるんですよ! よくもそんな事を言えますね!」
「うるさい! お前には関係ないだろう! 他人は引っ込んでろ!」
怒鳴り声が部屋中に響く。それを聞いた看護師が数人、慌てて待合室にやってきた。二人を無理矢理引き離し、落ち着かせようとする。
その時、室内の電話が鳴った。
それは手術終了の連絡だった。