私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま
 彩は薬でまだ寝かされているが、手術は一応無事終了したとの事だった。
 本来ならばこれから家族に面会の時間を与えてもらえるはずだが、暴れていた北斗と両親に今日の面会の許可は出されなかった。当然だ。集中治療室で騒動を起こされるわけにはいかない。

 彩はこれから集中治療室で回復に専念する。
 北斗は経験上、彩が高度治療室を出られるようになるまでに数週間はかかるだろうと推測していた。

 彩が目覚めないまま、何日も何日も時間が経過していく。

 薬で眠ったままの彩。
 彼女の身体中からは色々な管が出ていて、頭上のモニターには彩の様子を知らせる数字が二十四時間カラフルに表示されていた。沢山の薬や機器で生かされている彩。もう何日も一進一退の状態が続いている。

 だがその間、彩の両親は一度も面会にこなかった。

 北斗は勤務日も休日も、一日も欠かすことなく彩の様子を見に行っている。
 薬の量が減ったとか、出血量が減ってきたとか、熱が下がったとか、そんな知らせが北斗は何より嬉しかった。
 北斗以外に誰も面会に来なかったと聞くと無性に腹がたったが、逆にそんな人たちを気にする必要など無いのだと考えを改める事にした。
 そんな人たちの元に彩は返さない。
 自分が彼女を幸せにするのだと、北斗は彼女の寝顔に誓うのだった。
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