私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま
 どの口が言うんだ、と北斗は胸糞が悪くなった。

「僕は手術中にあなた達が言った事を忘れていません。彩さんの命を、人生を馬鹿にしているのはあなた達だ!」
「うるさいわね! とにかくこんな結婚は認めないわ! 無効よ、無効!」
「お姉ちゃんを返せ、この結婚詐欺! 犯罪者!」
「そうだ! とにかく彩を返しなさい。彩が家に帰って来てくれないと困るんだよ!」

 両親と妹は北斗の話を聞かず大声でまくし立てる。らちが明かなかった。仕方ないと判断した北斗は、カバンから冊子を取り出した。

「帰って来てほしいのは、これが理由ですか?」

 それは共済保険の約款(やっかん)である。北斗はそれを両親の目の前に突き付けた。

「彩さんのように先天性の疾患がある場合、入れる保険は限られています。彩さんにかけれている保険はこれですよね?」

 その書類を見た両親は急に口をつぐんだ。事情を理解していないであろう妹だけが「うるさい犯罪者!」と未だ北斗をののしっている。北斗はそれを無視して続けた。

「これにはこう書いてあります。『保険の支払いは本人または同居親族に限る』つまり、彩さんと同居していない限りあなた達が保険金を受け取る事は出来ない。そうですよね」
「なっ、そ、それはそうだが……なぜ君までそんな事を調べているのだね。ああそうか、君も彩に保険をかけて金を取ろうとしたんだろう!」
「君『も』?」
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