私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま

再会

 職場に向かうバスの中。
 心臓に難病をかかえる彩は優先席に座っていた。
 膝に置いた黒のカバンの上には赤地に白十字のヘルプマークが鎮座している。混雑した車内でこうして座っていられるのは、このマークのおかげだ。

(ここに居る人たちにも『座れて羨ましい』と思っているのかな)

 バスが曲がるたび、通路に立つ人のバッグが彩の肩にぶつかってくる。居心地の悪くなった彩は、朝の遥花とのやり取りを思い出してしまった。

(……いけない)

 彩は頭を小さく左右に振る。

(被害妄想だ。ちゃんとしろ、私。大丈夫、大丈夫)

 深呼吸して気持ちを整える。
 その間にカバンが震え、彩は中からスマホを取り出した。小中学校時代からの友人からLINEが届いている。

『おはよ』
『彩は今度の同窓会行く?』

 そのメッセージを見て彩は昨夜の事を思い出した。中学時代の同級生グループLINEで出ていた同窓会の話題に、彩は返事をしていなかったのだ。
 来週金曜の夜に行われるという同窓会。病気のせいで体力のない彩には、一週間の疲れがたまっている金曜の夜というのがとてもネックだった。

「体調次第かな」
「もうちょっと考える」

 彩はそう返信して仕事に思いをはせた。仕事が多くなければ、行けなくもないけど……。

『そっか』
『高橋くんは彩に絶対に会いたいって言ってたよ』
『行けるといいね』

「え?」

 不意に出た名前に彩はドキリとした。
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