私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま
 高橋(たかはし)北斗(ほくと)くんは小、中学校時代によく同じクラスになっていた男の子だ。

 艶やかな黒髪で、優しい顔をした大人しいタイプの子。常に自信がなさそうで、そのおどおどした感じが彩には勿体なく見えた。博識で優しく、誰に気付かれなくても責任持って係の仕事を完遂する彼は、目立たないけれど格好いいと思っていたものだ。

(高橋くん、今どうしてるんだろう)

 高橋くんと彩は中学校卒業後一度も会えていない。
 個人的に遊びにいくほどの仲ではなかったし、同窓会や成人式でも縁がなかった。彩の体調が悪かったり、彼の仕事の都合が合わなかったりしたのだ。

 ――絶対に会いたい。

 そんな事を言うなんて、高橋くんは急にどうしたのだろう。確かに今まで会えなかったけれど、絶対だなんて少し強い言葉な気がする。たいした仲でもなかったのに、なんだか気になってしまう。

『無理にとは言わないけど、行けそうなら行こ!』

 友人のメッセージに背中を押される。

「うん、そうだね」
「行けるように調節してみる」

 返信した彩は改めて仕事のスケジュールを考え始めた。
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