私を生かしてくれたのは元同級生のお医者さま
 それから二週間。
 仕事終わりの彩は同窓会の会場へと向かっていた。
 バスの窓に映る自分の顔は、ほんの少し血色が悪くやつれている。

(メイクは直したけど、やっぱりちょっとクマが気になるな)

 彩の心臓は生まれつき形がおかしかった。
 幼い頃に何度も手術を受けたおかげで大人にはなれたけど、普通の人より体力はなく制限も多い。
 疲れてくると血液循環が悪くなり息切れするので、仕事のあとの外出は正直不安だった。まして、疲れのたまった金曜日。無理をしたら倒れてしまうかもしれない。

(今日はお酒を飲まないようにしよう)

 少量の飲酒は許可されているけど、今日はやめておいた方が良いだろう。うっかり倒れてみんなに迷惑をかけるわけにもいかないし。
 そんなリスクを承知で参加を決意したのは、高橋くんの話を聞いたからだ。

(絶対に会いたい、か)

 ずっと会えていなかった高橋くん。だからこそ、彩も彼に会いたくなった。
 どんな人に成長しているのか、なぜそこまで彩に会いたいと思ってくれているのか、聞いてみたい。

 期待を胸に、彩は駅前のバス停でバスを降りた。
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