【完結】婚約破棄イベントが壊れた!

「『平民っぽい服』は、どこで手に入れたのですか?」
「秘密。カリスタの分もちゃんと用意してあるからね」
「ありがとうございます」

 あれ? どうしてわたくしの服のサイズを知っているのかしら……?

 まさか、殿下には千厘眼が……!?

「カリスタも、王妃教育の休暇が必要だろう?」
「……そう、ですね。さすがに疲れました」
「うん、そうやって弱音を言ってくれるの、うれしい」

 エリオット殿下はそっとわたくしの頬に触れた。

 悪役令嬢として、きちんとイベントをしなくちゃ! ……そう、強く思っていたのよね。

 ゲームのシナリオが終わったことで、ちゃんと彼のことを見ることができているのだと思う。

 そして、そんなわたくしのことを、エリオット殿下は見守ってくれていたのね。

 そのことに気付いて、自分が恥ずかしくなった。

 好きなゲームの中に転生して、攻略対象たちに会って舞い上がっていたことに、気付いたから。

 ここは『カリスタ(わたくし)』にとって――現実の世界なのだ、と。

 悪役令嬢として、わたくしはダメダメだったと思うけれど……それでも、とても大事なことに気付けたの。

「エリオット殿下も、弱音を教えてくださいませね。ちゃんと聞きますから」

「……わたしはどちらかというと、こうして触れていると幸せだからなぁ」
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